ガーナ共和国 理科教育
自己プロファイル
派遣国:ガーナ共和国
隊次(具体的な派遣期間):2018年度1次隊(2018年6月~2020年3月)
協力隊派遣前の専門学校・短大・大学(所属学部やゼミ):酪農学園大学環境共生学類・環境GIS研究室
応募時の資格:教育免許中高理科取得見込み、狩猟免許、普通自動車免許
職種:理科教育
配属先:フォメナT.I.アメーディア高等学校(Fomena.T.I.Ahmadiyya Senior High School)
活動対象の人:現地高校生あるいは教員
要請内容:配属先高校にて、協力隊ボランティア3代目として教員不足の解消、理科実験教育の導入。
自己紹介(志望理由や活動内容を含めて)
大学3年の時に、JICA札幌の中のJOCAにてインターン活動をさせていただき、そこで出会った隊員OBの姿を見て「この人達のようになりたい」と思ったことがきっかけです。派遣先はガーナのアシャンティ州フォメナという、山に囲まれた町にあるムスリムの高等学校で、学校規模として学生は約500人程、多くが敷地内の寮で生活をしています。そこで3代目のボランティアとして理科の実験教育の拡充を目的に派遣されました。
~現地でのことについて~
①現地で活動して良かったと思った瞬間
一人の先生に付いて授業のTAとして活動し、授業に応じて可能であれば実験授業を自分が担当していました。その様子をたまたま見た他の先生が「自分のクラスでもその実験を見せてあげて欲しい」と言われた時はとても嬉しかったです。
実際に実験を見せて、生徒の反応も良かったりすると先生も一緒に喜んでくれ、自分がここにきた意味を感じる事ができました。
他に、活動とは違うかもしれませんが、学校の同僚や家族、生徒と触れ合いながら自分という存在が認められていった事は何よりありがたく、嬉しかったです。日々、名前を呼んでくれて笑顔を向けてくれるだけでもここに来てよかったなと感じました。
②活動で苦労したor辛かったこと、どう乗り越えたか
理数科科目を中心に学校の先生の意識が高く優秀であったことと、実験教材キットが2015年にイギリスの団体から寄付されていたことで隊員としての活動の方向性を見失いました。
実験活動が全く行われていないと思われていましたが、日本と同じとまではいかないまでも適宜行われており、確かに教科書の内容を口頭説明のみで進行する授業はあれど、それは膨大な単元を終わらせるために仕方ないことのようでした。
同僚も知識は豊富で、実験などもこちらが提案したものを即時理解、あるいは既知の情報であったり、新卒の自分にできることはあるのかと自問自答の日々でした。
そんな中、その現実を少しでも打破すべくその時自分が感じていたことや考え等すべて同僚の先生達に打ち明けることで、ボランティアの活動について一緒に考えてもらい一歩進むことができたと思います。
③要請内容への取り組みとその後
要請内容には教員不足の解消とありましたが、実際には教員の数は足りていて、配属直後においてはガーナの新しい教育改革制度の影響で寧ろ教員は飽和状態でした。そして理科実験については他校に比べ恵まれており、実験に対して意欲的な同僚たちによって適宜行われているように見えました。
そこで、細かな課題を見つけることから始めました。見つけた小さな問題点として、受験に向けた、生徒主体による計測等をメインとして行う実験授業は多いものの、普段の授業内で理解を助けるための演示実験が少ないと感じたため、ローカル素材を用いて作成した実験を見せるなどを行いました。
また、教科書などイラストや視覚教材が少ないため、画用紙にイラストを描いて先生に使用してもらうなどを行いました。優秀な先生達のプラスαの存在を心掛けて活動をし、大きな変化や成果はなかったかもしれませんが、少しでも生徒の理解の助けや、意欲の向上につながっていればと思います。
④要請内容外での取り組みと展望
理数科分科会に所属し、小学校隊員や理数科科目を指導している隊員主催のワークショップに参加し、ガーナの各地で教員向けに、ローカルでも手に入る素材を使用した簡単な理科実験を紹介しました。
普段見ることのできない、他の隊員の活動地域や状況などを見学でき、とても良い刺激をもらえるので、そのような企画があれば是非参加することをお勧めします。また、配属先学校には各教室に時計がないことから、個人で壁掛け時計を購入・寄付しました。
何事も時間通りに進まないガーナの国民性。それについては、しょうがないのかなと思っていましたが、テストや自習の時間に何も指標がなくただただチャイムを待ちながら学習を進めるのは勿体ないのではと思い、決められた時間内でのタイムマネジメントが意識できればと思い導入しました。その他だと生徒の空きコマを利用し日本文化紹介を行ったり、分科会として実験紹介動画の編集を行うなどしました。
⑤現地での活動や生活(隊員生活)で得たもの
現地での生活を経験することで、自分自身の大きな自信につながりました。お腹を毎日下しても、水が出なくても、電気がつかなくても、食べたいものが食べれなくても、言葉がうまく通じなくても、日本に帰ってきて壁にぶち当たった時それらを後で振り返って「あそこでなんとかなったんだ」とポジティブに考えることができました。
その経験が今の自分の大きな支えとなっていると実感しています。また、日本に帰って来たあともやり取りを続けている現地の友人ができた事、同じ隊員として活動を切磋琢磨した友人が日本国内でも多くできた事は、かけがえのない素晴らしい事だと思います。
⑥新卒だからできたと思うこと、逆にもっとやっておけばよかったこと
新卒という立場であるからこそ、臆せず色々なことに挑戦できるかと思います。また、周りの方々に何かと目をかけてもらうこともあれば、こちらからお願いすればアドバイスをいただく事ができます。“日本ではこうだから”という価値観を抜きに情報を集めて、チャレンジをして行く事で活動を進め、新卒でしか出せなかった成果もあるかと思います。
結局のところ本人次第ではありますが。他の隊員に比べ知識や経験が足りないことから、壁にぶつかることも多く、悩むこともあると思います。現地の課題に対して、正解を見出せなかったり、回り道を繰り返し他の隊員に比べて円滑に活動が進まないこともあるかと思います。ですが、そういった経験をこの年齢で経験させてもらえる事は、将来の可能性・選択肢を大きく広げるきっかけになると思います。
~協力隊全般について~
⑦訓練所での感想
訓練所では、職種や年齢など様々な人が集まり共同生活や語学クラスなどでたくさん交流する機会があります。通常の社会生活ではまず出会うことができなかった人達と、隊員としての派遣という共通目標を掲げて訓練を行うため、世代を超えて友人を作ることができるまたとない機会でした。
同じ生活班の人達とは特に仲良くなり、互いの誕生日を祝ったり、一緒に外に食事に行ったり。派遣が終わった後も交流が続く人もいて、訓練は大変でも楽しい日々を送ることができました。後悔があるとすれば、もっともっと色んな人に話しかけてみればよかったなと思います。新卒の立場で、これほど多くの人と壁なしに関われる事はそうそうないと思います。
⑧選考時はどんな面接だった?
面接は人物面接と技術面接の二つがありました(正式な名前は忘れました)。人物面接では、志望する職種や国、志望動機など聞かれました。技術面接では、職種が理科教育ということもあり理科用語の説明(「プラズマとは何か」)や実験室の様子が書かれたイラストを渡され、どのような点が危険か、間違いかなどの問題を口頭で答えました。
器具の取り扱いや、実験を行う上での注意点など一度確認しておき、可能な限り答えられるように準備をしていたほうがいいと思います。
⑨何故受かったと思うか
今でも自分はなぜ受かったのか疑問ではありますが、面接で「自分はどんな国に行っても頑張る」と伝えたことは大きかったのではないかと思います。
多くの隊員志望の方は、どの国に行きたいか一つに絞っているかと思いますが、新卒で技術が乏しい場合、希望通りに行ける確率は少ないと思います。であれば、どんなに国でも行ってみたいという意思を持って、どんな環境でも対応します!やる気があります!というアピールをした方が合格率という意味では上がるのかなと思っています。
(もちろん自分の中でどうしても行きたい要請、国があればそれを伝える事は大事だと思いますが。)
自分は結果的に第3希望の要請に合格となりましたが、ガーナという国にその時の仲間と共に行けた事は、奇跡のような本当に素晴らしい事だったと胸を張って言えます。こだわりも大事ですが、どんな場所でも行ってみるまで分かりません。寧ろ、希望して行っても理想とかけ離れている場合もあるので、どんな国でも頑張るという考えは大事かなと思います。
⑩協力隊終了後の進路
現在自分は、小学校で講師として働かせていただいています。協力隊の経験を通して、日本の現場でも働いてみたいと思い現在の進路に進みました。ここで経験を積みながら、教員への本格的な道へ進もうか日々考えておりますが、自分のやりたい事を見つけながら前へ前へと進む事ができればなと思います。
やっておけばよかった事としては、隊員として派遣されている内から日本での進路についてもう少し具体的に考えておけばと思っています。結果、現在良い職場と巡り会う事はできましたが、隊員期間中にもっと目を向けていれば、やりたいことに対して目標立てて準備や勉強などしっかり進める事ができ、よりスムーズに進められたのかなと思います。
~語学について~
⑫協力隊の面接受けた時の語学力は?
JICAボランティア応募の際TOEIC等のスコアが必要であったため、試験を受けました。スコアは400程度でした。応募するうえで必要最低限程度の語学力しかなかったと思います。大学時代にゼミで留学生の受け入れ等で英語は練習していたつもりですが、本格的に勉強を始めたのは応募後だったと思います。
訓練所入所時も語学クラスは下の方から数えたほうが早かったですが、訓練所で基礎から再度学ぶことができたので語学の不安は少しずつ解消されました。もちろん語学に関してしっかり準備して、力をつけておくに越したことはないと思います。その方が応募段階で、要請内容などやりたいことに合わせて選択の幅が広がると思います。
⑬現地で語学は通用しましたか?
簡単なやり取りであれば通用します。がやはり、業務に関わる専門的な内容に関しては難しいと感じることが多かったです。生活全般に関してはその場その場で対応できますが、教科指導や学校運営などにおける専門用語(理科の単語、器具、役職、行事)などはこちらから何度も説明をお願いすることがありました。
気軽に聞くことができる同僚を見つけることができれば、少しは楽になるかと思います。現地語は、各国それぞれのやり方があると思いますが、自分はホームステイ期間中に基礎を学び、その後は生活の中で少しずつ語彙を増やしていきました。現地語の方が、現地の方々が熱心に教えてくれる上、初対面でもすぐ打ち解けることができるツールとなるので、学ぶ意欲は高く持った方が良いと思います。
⑭どのように語学を勉強したか?
活動をするうえで伝えたいことがある時、あるいは講義などを行う時には事前にスクリプトを作成していました。ネットや本などで言葉を調べながら作成していく中で、少しずつ紐づいて学ぶことはできるかと思います。
あとは、同僚との何気ない会話の中でよく出てくる言いまわしを真似したり、言いたいことをすぐ調べてどんどん使うようにしました。自分は言葉を調べるだけだと頭に残らない人なので、とりあえず口に出して成功体験を増やして記憶に残るようにしました。
今でも語学に関してはまだまだな自分なので、日々勉強中ですが、この協力隊経験が語学の成長のきっかけとなってくれました。